シックハウス症候群に空気清浄機の効果はあるのか?
アレルギー、ハウスダスト、シックハウス症候群に空気清浄機の効果はあるのか?
(記事元)
食物アレルギーは呼吸器系のアレルギーを併発するとよく言われています。筆者の息子も食物アレルギーを発症したので喘息などの呼吸器官にまつわるアレルギーに注意する必要が出てきました。
ちなみに呼吸器および鼻にまつわるアレルギーを引き起こす抗原(アレルギーの原因物質)をまとめた表はこちらです。
ハウスダスト、ダニなどよく耳にする原因が上位を占めています。
これらの原因物質を取り除く効果が高いといわれているのが空気清浄機です。
最近ではイオン、プラズマクラスターなど付加価値をつけてさらに効果アップしていると言われています。
しかし、私は花粉症暦5年ですが一度も効果を実感した事がありません。
はたして空気清浄機は効果があるのでしょうか。
結論を言ってしまうと、空気清浄機では主なアレルゲンを取り除く事ができません。
一体なぜでしょうか。
※参照元:アレルギー疾患診断・治療ガイドライン 2010
ここ10年で小学生のアレルギー性鼻炎は30%増加、アトピー皮膚炎は25%減少、気管支喘息は40%増加していることがわかります。アトピーは減少していますが、気管支系のアレルギーは増加傾向です。
アレルギーを発症する患者は子供だけに関わらず、大人も増加しています。
下記の表をご覧ください。
成人喘息は最近10年で2倍以上に増加しています。
このように小児にとどまらず、成人でも呼吸器系のアレルギーが増えています。
アレルギーが増えた原因
1970年に起きたオイルショックより、省エネルギーの為にビルの換気量の低減が図られました。特に日本は住宅に省エネルギー化が図られ気密性の高い住宅が多いです。
またその他にも壁紙、フローリングで使用している接着剤からホルムアルデヒドが揮発している事がアレルギーに拍車をかけています。
室内空気を悪化させる建材と発生する物質をまとめました。
悪化させる建材一覧
複合材⇒ホルムアルデヒド
カーペット⇒PVC
塗料⇒リモネン
PVCパイプ、ワイヤー、ケーブル⇒SVOC
家を建てるのに必要な建材でこれだけの悪性物質が発生しています。昔に比べ、空気中に漂う化学物質の量が激増した事が、アレルギーを増やした原因のひとつです。
また、問題の住宅を離れると解消する特徴を有するものをシックハウス症候群とよんでいます。
空気清浄機はどれほど効果があるのか
まずは空気清浄機の集塵性能について調べてみました。
空気清浄機の性能は社団法人日本電機工業会が定めるJEM1467という規格にのっとって作られています。ということは日本電機工業会が行っている試験に合致しなければならないという事です。日本電機工業会ホームページで空気清浄機の働きについて説明していました。
※参照元:日本予防医学協会 知っているようでしらないアレルゲンQ&Aより転載
上記資料によると主なアレルゲンは花粉、ダニとなります。今回は主なアレルゲン+シックハウス症候群に空気清浄機は効果があるか調べてみました。
花粉
こちらのサイトによると花粉の大きさは30~40μmとなっています。花粉の粒はタバコの煙に比べておおきいため、落下速度もかなり速いです。ダイキンのHPによると1分で1m80cm落下すると言われています。
空気清浄機は空気中に舞っているアレルゲンしか集塵する能力はありません。ということは1分間で部屋に舞っている花粉全てを吸い込む必要があります。
ほとんど沈殿しないタバコの煙で試験をしたときでも、28畳間の粉じんの90%吸い込むのに30分かかるので1分間に花粉を吸い込める量は10%あれば良い方です。
※日本電機工業会検査方法より計算
たかだか10%吸い込んでも意味はほとんどありません。花粉に対して空気清浄機は効果がないといっていいでしょう。
ダニ
ダニはヒョウヒダニ、イエダニ、ツメダニなど様々な種類がいますが、どれも大きさは0.1mm程度と小さく、人間の眼で見える大きさではありません。
ダニ自体アレルゲンにもなりますが、もっともアレルギーの原因になるのが糞や死骸です。こちらの大きさは10~40μm程度であり空気清浄機で十分捕獲が可能です。
ただしこちらも花粉と同じで10~40μmの大きさが空中に浮遊する事はほとんどなく、大概は布団、毛布、畳の上に沈殿しています。そのため空気清浄機が活躍する事はほとんどないでしょう。
シックハウス症候群
シックハウス症候群は接着剤等が気化した匂いなどです。オーバーな表現ですが、毒ガスと考えたら分かりやすいかもしれません。
空気清浄機は主に浮遊している物質を吸い込んでフィルターをかけて排出しているだけなので分野外ともいえます。
「最近はダイキンの光速ストリーマーが発売されたからシックハウス症候群は大丈夫じゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
はっきりいってあまり効果を過剰に期待しないほうがいいです。
ダイキンのホームページに以下の説明が記載されていました。
「換気が主であり、あくまでも補助として考えて下さい」と説明が記載されています。過剰な期待をせず換気をするしかなさそうですね。
むしろ悪化?
実はシックハウス症候群に関しては空気清浄機を使用したら悪化させる可能性があります。
最近流行りのイオン、オゾンを発生させる空気清浄機の場合、室内のリモネンとの酸化反応により、有機酸類、有機エアロゾルが精製される危険があるのです。
さらに接着剤との加水分解をおこし、ホルムアルデヒドの濃度が時間を経過しても減少が見込めないことがあります。
空気を綺麗にするはずが、悪化させてしまう本末転倒の役割を果たしかねないのです。
空気清浄機の得意分野
これまでの説明だと「空気清浄機は高いだけの役立たず」だと思われる方も多いかと思います。しかし中には空気清浄機が適しているアレルゲン物質があります。
それはpm2.5とペットアレルゲンです。
pm2.5は0.25μmと粒が非常に小さく、沈殿する事もほとんどない為、空気清浄機で十分集塵することができます。日本電機工業会でもpm2.5は検査項目に入れており、空気清浄機による除去効果を認めています。
ペットアレルゲンも0.1μmと粒が非常に小さく、ほとんどが空気中で浮遊しています。したがって空気清浄機で集塵が可能で取り除く事ができるのです。
主なアレルゲン対策は掃除と換気
以上の通り、空気清浄機では主なアレルゲンを取り除く事ができないことがわかりました。
結局、できることは掃除と換気だけです。掃除は沈殿した花粉、ダニを取り除く事ができ、換気は湿度の調節、シックハウス症候群の予防につながります。
実はダスキンのホームページでもアレルゲン対策として掃除と換気が一番重要とうたっています。
アレルギーを持っている方やお子さんのいるご家庭の方は、是非一読しておくと良いでしょう。